久松
口では勉強を頑張ると言っても、なかなか行動に移せない姿を見るとイライラしてしまいますよね。
きっとお子さん自身もそんな自分のことをイヤだなと思っています。
親子でイライラしないためにも、自分で自分のやる気をコントロールできるようなるといいですね。
多くの人がやる気は「気持ち」の問題だと思っていますが、そうではありません。意志の力ではなく環境やルールの力を使ってください。前回は勉強に集中する環境づくりに取り組んでもらいましたが、今回はその続きとしてルールづくりです。ルールづくりもまた環境づくりの一環です。
実践ワークも交えながら一緒に勉強のやる気を操るルールづくりに取り組んでいきましょう。
おさらい:やる気をあやつるための基本戦略とは?
以前、やる気をコントロールするには「戦略」が大事だとお話しました。
その戦略とは事前準備をしておくこと。具体的に言うと、環境とルールを事前に作っておくことでしたね。
今回はその「ルールづくり」に取り組んでもらいます。
では、どのようにルールを作れば、やる気と集中力を自分で引き出せるのでしょうか?これもやはり基本的な考え方は「環境づくり」と一緒です。
勉強よりも優先順位が高いものを隠して、勉強の優先順位をあげるようなルールをつくる。そうすると、スムーズに勉強に取り組めるようになります。
具体的には3つのルールを作ってみてください。
- スマホやタブレット使用のルール
- テレビ・ゲームについてのルール
- 勉強開始時間についてのルール
この3つです。
これ以外にも自分の状況に合わせてルールを追加していただいてもかまいません。この3つは多くの人が勉強に取りかかれない原因になっているものですので、まずこの3つについてマイルールを決めておきましょう、ということです。
これから3つのルール作りを一緒に進めていきますが、その前に少しだけルールづくりのコツについて理解してもらう必要があります。
ルールづくりのコツ
ここでは「うまくいくルールを作るための3つのコツ」について理解してください。この後でルールを作ってもらいますが、そのルールを作る際に、今からお話するポイントを外してしまうとルールがうまく機能してくれません。
それだとルールを作る意味が無くなってしまうので、これから言う3つのポイントを守ったルールを作るようにしてください。
まずはよくあるダメなルールの例を挙げてみます。「毎日家で最低1時間は英語の勉強をする」。もしあなたがこんなルールを立てていたとしたら、ルールが続かなくて当然です。
どこがダメか分かりますか?それを理解するには、反対にうまくいくルールが持っている3つのポイントを知る必要があります。ポイントは3つです。
その3つとは、
- if-then形式であること
- できるだけ具体的にすること
- ハードルを上げすぎないこと
の3つです。ひとつずつ説明しますね。
If-then形式であること
まずIf-then形式とは何かというと「もし●●の状況になったら、△△をする」という形式です。この形式でルールを決めるとうまくいきます。
例えば、勉強開始時間のルールを決めるならば「8時になったら、英語の勉強をする」とか「晩ご飯を食べ終わったらすぐに英語の勉強をする」という形式で決めるようにしてみてください。●●になったら、という条件を決めておくと、人間の脳はその条件に気づきやすくなる、という性質があります。
「行動を取るきっかけ」のことをトリガーというのですが、このトリガーを決めることが、うまくいくルールにするために必須です。ですので、あらゆるルールを決めるときには、「もし●●の状況になったら、△△をする」というif-then形式にすることを心がけてください。
できるだけ具体的にすること
2つ目のコツは「できるだけ具体的にすること」です。人間の脳は映像が思い浮かぶぐらいまで、具体的にイメージしないと、その行動が取れません。
映像が思い浮かぶレベルで、できるだけ具体的に決めてください。
先ほどの例を思い出してください。「8時になったら、英語の勉強をする」というルールを決めたとしますね。これだと8時になったら、の部分は映像がイメージできるほど具体的ですよね。時計の針が8時を指しているイメージが浮かんできます。
でも英語の勉強をする、というのは少しイメージしにくいです。一体何をしたらいいんだろう?問題集をやるのか、単語帳を開くのか、学校の宿題をやるのかイマイチわかりません。
こうした場合にはもう少し具体的にする必要があります。例えば、8時になったら教科書ワーク中2の続きから問題を解く、というルールにすると良いです。英語の勉強をするよりも、教科書ワーク中2の続きから問題を解く、の方がより具体的になっていますよね。きっと映像も浮かんでくると思います。こんな感じで、より具体的にif-thenで行動を決めてください。
ハードルを上げすぎないこと
3つ目のコツについては「ハードルを上げすぎないこと」です。無茶な目標やルールを作っても長続きしません。例えば、8時になったら、教科書ワーク中2を最低10ページ終わらせる」とか「8時になったら教科書ワーク中2を最低でも1時間やる」みたいな目標は高すぎます。
最初はよくても、時には部活で疲れていることもありますし、体調が悪いこともでてきます。そんなときハードルが高すぎるルールにすると、守れません。これだとルールが続きませんし、ルールを破ったときに「自分ってなんで続かないんだろう」「もう一回守れなかったし、もうこのルールはなかったことに…」みたいな最悪な結末を迎えてしまいます。
ハードルは下げましょう。下げれば下げるほどルールはうまく機能しやくなります。ハードルを下げるときのポイントは、最初の一歩目の取りかかりの行動をルールで決めておくことです。例えば、教科書ワーク中2の続きから1問を解く、とか、もっというと、教科書ワーク中2の続きのページをまずは開く、みたいに最初の一歩目の小さな小さな行動をルールに盛り込むんですね。
そうすると、ハードルが下がっているので、続きやすくなります。なんせ問題集を開くだけでもルールは守れているわけですから。実際にやってみると分かると思いますが、問題集を開いたら、ほとんどの場合もう自然に勉強できます。1問解いたら2問目も自然に解きたくなります。
最初の一歩を踏み出してしまえば、二歩目を踏み出すのは難しいことではないはずです。そうやって、ハードルを下げて、最初の一歩目の行動をルールにしてみることをオススメします。
以上の3つのポイントを守ってルールを作っていきましょう。いつも必ず3つのポイントすべてを守らないといけないというわけではありませんが、できるだけ多く守った方が、行動につながるより良いルールになります。できるだけルールに盛り込めるように意識してみてください。
ルールを破らないための仕組みを作る
実際にルールに作って貰う前に、もう一つだけやることがあります。それは「ルールを破らないための仕組み」を作ることです。
せっかくルールを決めても、それを破ってしまっては意味がありません。でも人間の本能はルールが大嫌いです。本能の力は強力なので、すぐにそのルールを破ろうと暴れ出します。
そんなとき、その本能の暴走を抑えるためには、事前にルールを破らないための仕組み作りを進めておく必要があります。事前にルールを破らなくするための仕組みは2つあります。
- チェック体制をつくる
- ルールの期限を1週間にする
チェック体制をつくる
まず1つ目、ルールを守れているかどうかをチェックしてもらう仕組みを作りましょう。「あなた、ズルしてない?」というチェックの目があれば、人はズルしにくくなります。そのチェックの目をつくりましょう。
例えば、もしあなたが、勉強開始時刻についてのルールで「8時になったら、教科書ワーク中2の続きから1問目を解く」というルールを作ったとします。
このルールの場合、8時になってもゴロゴロしていないかをチェックしてもらう目が必要ですよね。それならば、家族にお願いして8時になってリビングにゴロゴロしていないかチェックして、もしダラダラしていたら注意して、と事前にお願いしておけばいいわけです。
こんなふうに「誰かにチェックされる」仕組みを自ら作ってみてください。結果的にルールが守りやすくなります。
ルールの期限を1週間にする
2つ目のルールを破らないための仕組みは「ルールの期限を1週間にする」ということです。ほとんどの人はルールの有効期限を決めなかったり、有効期限が長すぎます。
ルールの有効期限を決めないと、一生続くことになります。そんなの、初めから無理なんです。鉄の意志を持った人はできるのかもしれませんが、そんな人はきっとこの世界にいないでしょう。笑
ルールを一生守りつづけることは不可能、という前提で仕組みを作っていかなければ、意味がないんです。ではどのくらいが適切かというと1週間です。
やってみると分かりますが、1週間ルールを守るのも結構大変です。短すぎると思うかもしれませんが、1週間やったら、また1週間後にルールを再設定すればいいのです。良いルールならば、同じルールをもう一週間すればいいですし、改善点があるならルールを変えて再設定すればいい。
これがルールを守る仕組みの2つめ「ルールの有効期限を1週間にする」です。
ルールづくりに関する事前のレクチャーは以上になります。では早速次から、実践ワークを進めてルールを作っていきましょう。
お子さんにバトンタッチして、ワークを進めてみてください。
ワーク1:スマホ・タブレットに関するルールを作ろう
このクエストでは「スマホ・タブレット」に関するルールを一緒に作っていきましょう。
次の手順で取り組んでみてください。
- スマホ・タブレットのせいで「勉強に取りかかれない」という状況に陥らないために、あなたはどんなルールを作ればよいと思いますか?
- チェックは誰にお願いしますか?
- このルールの有効期限はいつにしますか?
1.スマホ・タブレットのせいで「勉強に取りかかれない」という状況に陥らないために、あなたはどんなルールを作ればよいと思いますか?
ここは、例えば、もし8時になったら、スマホの電源を切ってお母さんに預ける。みたいなルールになるかなと思います。すでに玄関に置くという環境を作っていた場合は、それをルールとしても構いません。別に環境とルールはかぶっても構いません、効果は同じです。
ルールは一つじゃ無くてもかまいませんが、最初からあれこれ決めても守れないので、最初は1つに絞ることをオススメします。一番効果的なのは「どのタイミングになったら、スマホを触るのを止めるのか?」を決めることです。
2.チェックは誰にお願いしますか?
先ほどの例だと、8時にお母さんに携帯を預けるわけですから、チェックしてくれる人はお母さんになるわけですね。チェックしてくれる人には事前にお願いして、ルールを破らないように厳しく見てね、と言っておいてください。
簡単にルールを破っていては、それこそルールを作った意味が無いので、ルールを守れているかどうかをチェックしてくれる人には、前もって「厳しく見てね!」と伝えておいてください。なんなら家族全員、身近な友達全員に言いふらしておくぐらいの勢いでやると良いかもしれません。
3.「このルールの有効期限はいつにしますか?
上でお話したとおり、1週間をルールの有効期限にすることをオススメします。今日から1週間後の日付を書くだけで構いません。
以上の3つに取り組んでスマホとタブレットに関するルールを自分で作ってみてください。
ワーク2:テレビとゲームに関するルールを作ろう
ここでは「テレビとゲーム」に関するルールを一緒に作っていきましょう。
- 基本的な流れはスマホ・タブレットと同じです。次の3つのアクションを実行してみてください。
テレビ・ゲームのせいで「勉強に取りかかれない」という状況に陥らないために、あなたはどんなルールを作ればよいと思いますか? - チェックは誰にお願いしますか?
- このルールの有効期限はいつにしますか?
ワーク3:勉強開始時刻に関するルールを作ろう
ここでは「自宅での勉強開始時刻についてのルール」を一緒に決めていきます。
何事もそうですが、取りかかるタイミングがもっともエネルギーを必要とします。
自転車をこぎ始めるときに一番力が要るのと同じです。まだひとりで自転車に乗れない子どもは、こぎ始めのときにコケてしまいます。あなたの勉強もきっと同じではないですか?勉強を始めるタイミングさえ乗り切れば、なんとかなるものです。
だからこそ勉強に取りかかるためのルールをしっかりと作っておくことが大事になります。で、そのルールを作る際に一番分かりやすいのが時間です。
勉強を始める時間をルールにしておけば、勉強に取りかかりやすくなります。これは裏を返せばその時間になるまでは自由に時間を使えるということでもあるので、息抜きの時間をしっかり確保できるというメリットもあります。
ということで、早速勉強開始時間についてのルールを自分で考えてみてください。
- 勉強の開始時刻はいつも何時にしますか?塾がある日、塾がない日のパターンに分けて考えてみてください。
- チェックは誰にお願いしますか?
- このルールの有効期限はいつにしますか?
まとめ
勉強に取りかかるまでのダラダラタイムにはみんな頭を悩ませています。
家でのダラダラタイムは塾に行っても解決できない問題なので、自分で工夫をするしかありません。
この悩みがなかなか解決できないのは、やる気が出ないのは気持ちの問題だと思ってしまうから。ダラダラしたいのは本能なので、これを気持ちだけで押さえつけようとしてもうまくいきません。
だから事前にルールをつくり、対策を取っておきましょう。本能の力が発動しないようにする工夫をして、ダラダラする自分とサヨナラできるといいですね。