久松
塾だと集中できるけど、家だと勉強に集中できない。
ついダラダラしてしまう、勉強に取りかかろうと思ってもなかなか取りかかれないという方は、自宅で集中できる環境ができていないからです。
口では頑張ると言っているのに、ダラダラしている姿を見るとイライラしますよね?
実はお子さんも「やらないといけないとは頭で分かっているけど、身体が動かない」というジレンマにイライラしています。
人間は環境の生き物です。
勉強を頑張ろうと思ったら、まずは勉強する環境を整えましょう。
この記事では実践ワークを交えながら、勉強する環境づくりのお手伝いをします。もう親子でイライラするのはやめにしましょう!
あなたが自然にやる気が出る環境ってどんな環境ですか?
お子さんにこの質問をすると多くの人が「図書館」とか「塾の自習室」と答えてくれます。その理由を尋ねると「勉強しかすることがないから自然に取りかかれる」と答えてくれる人が多いです。
これは本当に的を射ている答えです。勉強のやる気は出そうと思って出せるものではないんです。あなたも、勉強するよりもおしゃべりしたりYoutubeを見ている方が楽しいと感じませんか?
ほとんど人がそうです。それは人間の本能だからです。人間の本能は、勉強よりもおしゃべりやYoutubeを優先するようになっています。本能には逆らえません。
ではこの本能と戦うにはどうすれば良いのか?
シンプルです。
勉強よりも優先順位が高いモノを目の前に置かないような環境を作れば良いのです。
つまり勉強のやる気を出すとは、少し極端に言うと「勉強よりも優先順位が高いものを見えなくする環境をつくる」ということなのです。
もっとシンプルに言いますね。勉強のやる気を出したいなら、勉強以外のものを目の前から隠せば良いのです。
ブロッコリーorチョコレート、どっちを食べますか?
もしあなたの目の前にブロッコリーとチョコレートが置かれていたとしたら、どっちを食べますか?
ブロッコリーを選ぶ人はほとんどいないはずです。でもどうしてもブロッコリーを食べさせたいならどうすればいいのか?チョコレートを置かなければ良いのです。
チョコレートを目の前に置いた時点で負けなのです。これが戦略です。これが環境づくりです。環境づくりの原則は「勉強以外のモノを目の前から隠してしまう」ということです。
これを具体的に3つのポイントにまとめました。
- 見えなくする
- めんどくさくする
- 取りかかりやすくする
この3つです。
ひとつずつ実行すれば、勉強のやる気を操るための環境が完成します。ここからはあなたのお子さんにバトンタッチして、ワークに取り組んでみてください。
ワーク1:「見えなくする」環境をつくる
なぜ見えなくするのが大事なのか?というと、上でお話したとおりで、勉強のやる気を引き出すには、勉強以外のものを見えなくする必要があるからです。
例えば、マンガ、スマホ、ゲーム機、テレビ、タブレットなどですね。これらは見てしまった時点で、そちらに気が取られてしまいます。見た時点で負けだと思ってください。
見えるところに置いた時点であなたの中に住む猛獣(本能)が暴れ出し、勉強どころではなくなります。
ということで、見えなくするにはどうすればいいでしょうか?2つの方法があります。
一番良い方法は別の部屋に移動させることです。「そこにある」と意識するだけでも気が散って良くないので、できるだけ勉強する部屋とは別の部屋に移動させてください。
スマホ、タブレット、携帯ゲーム機など、移動できるものは移動させてしまいましょう。これが一番良い環境作りの方法です。
でも、例えば、テレビとかマンガの本棚などは移動しにくいですよね?
移動しにくいものについては、2つめの方法、勉強するときに座る場所から直接見えないようにしてください。
例えば、自分の背中側に移動するとか、棚の引き出しにしまう、クローゼットにしまうようにしてください。本来は別の部屋に移動させた方が効果が高いですが、見えなくするだけでも効果はあります。
この2つのポイントを守って「見えなくする」環境作りを進めていきましょう。
ワーク2:「めんどくさくする」環境をつくる
ここでは環境作りの2つ目のポイント「めんどくさくする」に取り組んでもらいます。
少し復習ですが、勉強に集中できなかったり、勉強に取りかかるのが遅くなってしまうのは、勉強の優先順位が他のモノよりも低いからでしたね。
勉強よりももっと楽しいもの、例えばゲームやYoutubeが視界に飛び込んでくると、本能的に脳はそちらに気を取られてしまいます。
すると、結局勉強に取りかかることができなくなってしまうわけです。それを防ぐために、目の前から勉強よりも優先順位が高いモノを目の前から隠して、勉強の優先順位を上げてしまおう!というのが一つ目のワークでした。
今からやる2つ目のワークも基本的な考え方は一緒です。
勉強以外のことを「あえてめんどくさくする」ことで優先順位を下げて、結果的に勉強の優先順位を上げてしまおう!という考え方です。一つ目のワークと合わせてやることで効果が上がりますので、できる限り合わせて取り組んでみてください。
では、めんどくさくするとはどういうことか?
もう言葉の通りです、シンプルにめんどくさくしてください。
例えば、スマホが机においてあったらすぐに使えますし全然めんどくさくない。そらすぐに使ってしまいますよね。
でも、もしこれが少し離れた場所、、例えばリビングに置いておいたらどうですか?少しめんどくさいですよね。スマホを使おうと思ったらいちいちリビングまでいかないといけないし。さらに、これがもし玄関の靴箱の中だったらどうですか?
もっとめんどくさいですよね。冬なら玄関まで行くのは寒いし、夏なら暑いし、まぁめんどくさいなぁと。
さらに、もうひと工夫。電源を切っておいたらどうですか?使い始めるまでに待たないといけないし、もっと余計にめんどくさい。こんなふうに、あえてめんどくさくするというのが2つ目のポイントになります。
20秒ルール
めんどくさくする環境づくりにはコツがあります。「20秒ルール」と言われるルールを守ることです。
20秒ルールとは「何かやめたい行動があれば、普段よりも20秒余計に時間がかかるようにしましょう」というルールです。
人は、20秒余計にかかるようにするだけで、その行動を取る回数がぐっと減るということがハーバード大学の研究によって分かっています。
例えば、スマホを触るのをやめたいとします。普段はポケットに入っているから一瞬で取り出せますよね。これがもし、玄関の靴箱の中にスマホを置いたり、電源を切っておいたら、使い始めるまでに時間がかかりますよね。間違いなく20秒以上、いつもよりはかかりますよね。
こうして普段よりも20秒以上かかるようにしておくと、スマホを触るのがめんどくさくなって、スマホをつい触ってしまう行動をやめやすくなるのです。
これはもうあれこれ説明するよりも、実際に一度自分でやって見た方が実感できるかもしれません。一度、玄関の靴箱の中にスマホの電源を切って置いてみて下さい。きっと今よりもスマホを触る頻度が少なくなると思います。
このようにして「あえてめんどくさくする」環境を作るのが今回のワークです。
ということで、早速以下のワークに取り組んでみてください。
- ついつい気が取られてしまうものは何ですか?5つ以上挙げてみてください。
- 1で挙げたものを、使い始めるまでに20秒余計にかかるようにするのはどうすればいいですか?
- 2で挙げた方法を実行してください
ワーク1と被るものがあるかもしれませんが、それでも構いません。1では場所の移動をしたり、視界から隠したりしてもらいましたが、さらにそれをめんどくさくするにはどうすれば良いか?と工夫に工夫を重ねていけば良いのです。
小さな工夫や小さな進歩の先に自分が本当に望む大きな結果が待っているので、どんな工夫ができるのか、しっかり頭を使ってアイデアをひねり出していきましょう。では早速ワークに取り組んでみてください。
ワーク3:「取りかかりやすくする」環境を作る
ここでは環境づくりの3つめのポイント、「勉強にすぐに取りかかれるようにする」環境づくりに取り組んでもらいます。
ここまで2つの実践ワークを通じて、勉強以外のものの優先順位を下げる環境をつくってきました。
今回はその逆の考え方です。勉強の優先順位を上げるために、勉強に取りかかるまでのめんどくささを消してしまおうというものです。
どうすればいいかというと、20秒ルールをまたここでも使います。実は20秒ルールは逆の考え方もできて、普段より20秒短縮してあげることで、人はその行動を取りやすくなると言うことが分かっています。
つまり、勉強に取りかかるまでの時間を20秒短縮してあげるんです。そうすれば勉強に取りかかりやすくなる、というわけです。勉強はめんどくさいので取りかかるまでについダラダラしてしまいますが、一度とりかかってしまえば、それなりにつづくんですよね。
自転車をこぎ始めるときは力を使いますが、自転車が一度動き出してしまえば、そんなに力を入れなくても進んでいくのと同じです。勝負は「勉強に取りかかるまで」にあると言っても過言ではありません。
よく思い出してください。勉強に取りかかるまでって、けっこうめんどくさくないですか?まず学校のカバンから筆記用具を出して、さらに勉強用のノートを探して、続きのページを探して開く。さらに問題集を出して、続きのページを探して開く。めんどくさいですよね。こんなことやってるうちに、すぐに30秒ぐらいは過ぎてしまっています。
このめんどくささが勉強になかなか取りかかれない原因になってしまいます。そうならないために、一つずつの時間を短縮していけばいいのです。
勉強に取りかかる時間を短縮する3つの工夫
では以下の3つを実行してみてください。
1つめは筆記用具をカバンから出す、これをやめましょう。つまり自宅用の筆記用具を準備してください。学校で使う筆箱と家で使う筆箱を分けてください。自宅専用の筆記用具を用意することで、すぐにとりかかれるようになるからです。
塾に通っている人は、塾で使うものも分けましょう。筆記用具はそれぞれ別で用意しておいてください。家で勉強する場所が決まっている人は、そこにペン立てを置いて、そのペン立てにシャーペン・消しゴム・赤ペンを入れておくと「筆箱どこいった?」がなくなるので、なお一層良いと思います。
2つめ、問題集やノートを探す手間を省きましょう。まずは問題集とノートはどこに置くか決めてください。勉強机から一瞬で取り出せるところ、手を伸ばせばそこにある、というところに置いておくことをオススメします。
そして3つめ。これが一番大事です。問題集とノートは、続きのページから机の上に拡げたままにしておいてください。これは日々の準備です。毎回、勉強が終わったら問題集とノートを閉じていると思いますが、閉じずにそのまま開いた状態にしておくのです。そうすると、次に勉強するときに、いちいちノートの続きのページを探して、問題集の続きのページを探して、というめんどくささを消すことができます。
もちろん、他の科目を勉強したり、宿題をやったりする場合には一度閉じるしかないので、その場合はさっき決めた置き場所に戻すようにしてください。
でも、基本的には、その日の勉強が終わるときにはいつも、次の日にやろうと決めているところのページを拡げたままにしておいてください。毎日、次の日の準備をしておくと、次の日にまた勉強に取りかかるときにめんどくさくないので、スムーズに取りかかることができる、というわけです。
まとめ
人は環境を作ることで、やる気を操れるようになります。
一つひとつは細かいことなのですが、こうした小さな工夫を積み重ねていくことで、より勉強しやすくなる環境ができあがってきます。
意思の力で何とかしようとせずに、環境の力を使ってやる気を操っていきましょう。
次回は勉強のやる気を操るためのマイルールづくりについて解説します。